電子書籍と音楽配信サービス

 電子書籍とよく似ているパターンなのが「音楽配信サービス」。1980年頃に登場したレコードやカセットテープに変わる媒体だが、2003年にApple社がアメリカで運営を開始したiTunes Music Store(現iTunes Store)により「インターネットを使った音楽のデジタル配信」が始まると瞬く間に一般化し、音楽CDの販売枚数は激減して行った。「音楽のデジタル配信」の特徴の一つにはアルバムでも1曲単位で購入することができることで、消費者にとっては嬉しい販売方法であると同時にミュージシャンやアーティストにとっては収入減となる厳しい状況となった。2006年頃からCDショップも相次いで閉店に追い込まれ、消費者のCD離れが加速した。音楽CDなどを制作する関連会社もただでは済まないのは明白で、結局「音楽配信サイト(iTunes Store、ミュージコ、レコチョク、LISMOなど)」の一人勝ち(?)状態。今後電子書籍が主流になるかどうかは「より多くの作品を扱う電子書籍ストア」が鍵を握っている。

 現状の電子書籍ストアは利潤追求に必死のような気がする。特に「消費者(読者)のためを思ってやっているところは一つも無い」と言っても過言ではない!

 普通の書店って国内すべての出版社から発売されている本を扱うことができる。出版社や取次に在庫があれば田舎町の小さな書店でも取寄せ注文ができるのに対し、電子書籍ストア(インターネット)では出版社との契約が無い電子書籍は取寄せ注文ができない。出版社も自社が発行している全ての書籍や雑誌(既刊・新刊)を電子化しているわけではないし、出版社がやりたくても作家が電子化を嫌う場合もあるようだ。

 電子書籍は印刷や取次ぎの流通などが必要ないため印刷物と比較して安くなるのは当たり前だが印刷書籍定価の10〜30%ぐらいしか安くなっていない。電子書籍ストアには販売手数料30%以上取られれば確かに半額とかにはできないかもしれない。でもよく考えてほしい、電子書籍で利益を正しく得るべき人は誰なのかという事を!ちなみに私は作家の印税率を上げるのが一番だと考えている。なぜなら一般消費者は書籍に対して娯楽や教養などを求めているから作家に頑張ってほしいのだ(優秀な編集者も必要とは思う)!個人的に好きな作家はいるが、好きな出版社など特に無い。どの出版社でも構わないから好きな作家の本が読みたいという気持ちを理解している出版社はどれだけあるだろうか?

 電子書籍ストアで本を探す事は困難だ。個人差はあるが印刷書籍の場合は「●●というタイトルの本が欲しい」「●●という作家の本が欲しい」という理由以外になんとなく何冊か手に取りながらペラペラめくりながら気に入った本を購入するという人がいる。これは洋服を買うときと同じ心理だ。数多くある電子書籍ストアでこれらの感覚的な検索機能を備えたところは無く、一般的な検索はジャンル・書籍タイトル・作家ぐらいしかない。もちろん店員さんもいないので「●●という本はありますか?」という質問ができない。これも当たり前だが、自分の電子書籍ストアで販売していない作品に対して他の電子書籍ストアを紹介してくれる事も無い。つまり電子書籍ストアは本屋・書店とは呼べない存在である。

 Amazonや楽天などでは利用者が過去に購入したものや検索したものから推測し、オススメの本を紹介してくれるがどれだけの人があのサービスを役立つと思っているのだろうか?少なくとも私には不要というより邪魔だ!

 出版社などにもよるが新刊の印刷書籍を先行発売し、一定の期間を経てから電子書籍を発売するケースがある。発売されたらすぐ読みたいのが読者の心情なのに「どうしても印刷書籍を売らなければならない理由」があるために電子書籍で読みたい一般消費者(読者)は不自由な思いをしなければならない。 音楽配信サイトでは逆にCDよりも先に発売することもあるだけに、電子書籍の販売法法も見直す必要性が大いにある。